宝石の国、優しいお馬鹿さん
近く最終話を迎えた人気漫画「宝石の国」という作品についてどうしてもいつか書きたいと思い、お題ガチャでひいた表題と合わせて、今日書かせていただいてもいいかなと思いましたの投稿します。
アニメも制作されたアフタヌーンで連載されていた宝石の国。作者は「市川春子」さんです。短編「25時のバカンス」、「虫と歌」など、デビュー当初から高い評価を経て2012年より連載していた今作。2024年4月めでたく最終話を迎えました。
お話の内容を簡単に説明・・したいところではあるのですが、はっきり言って難しいので、ザクッっというと生き物とは何ぞや、というのを仏教の思想をベースとしたSF作品です。ここだけ聞くとなんだか楽しそうなお話を想像される方もいますね。確かに画風は本当にかわいい。ポップです。しかし内容が本当に苦しい。主人公の視点で話は進んでいくのですがなんと主人公は誰からも愛されていない、独りぼっちという設定がきつい。逆に主人公(フォスと呼びます)はみんなの為に何かをしたい、役に立ちたい。という承認欲求の塊+好奇心の塊のような性格の持ち主、だけど何もできない役立たずなので、まあ登場人物とかみ合わない、かみ合わない。それは話が進んでいくごとにフォスの性格も変わっていくのですが、やっぱり徹底的にかみ合わない。
先ほど仏教ベースの思想が根底にある、とお伝えしましたがまさにこれ即ちこの世の苦しさを描いているのです。仏教はこの物理世界は苦しいと説く思想。そのため、「かみ合わない、でも、分かりあいたい。」という思考にフォスは取りつかれていて、それが・・という転落の物語でもあります。まさに優しいお馬鹿さん。
様々な考察も出ているのでくどいことは言いたくないのですが、なんでか「鬱漫画ジャンル」に数えられ、何なら読者の感情をぐちゃぐちゃにするという意味では筆頭格なのではとの呼び声高い作品。その理由は上記にあるのだともいます。
私の感想からいえば、妙に納得、というか人は孤独が当たりまえ。ということを正面から語ってくるので個人的にはありがとうというお話です。というか仏教思想はきっと自分にかなりあっていると感じ、何なら仏教の勉強を始めたきっかけに当たります。
地球にすでに人間と呼べる生物はいない世界で、人間の成分は3つに分かれて存在している。1つは骨が宝石に、1つは肉が海の生物に、1つは月で魂に。
人間成分というものがあり、地球の呪いとして存在している。私個人も人間という生物がいるから地球は苦しいのかもしれない。ガイア思想も入っていますね。とすれば地球丸ごと救うには・・・。
ちょっと危ない思考に行ってしまいます。
作者の市川さんは「極楽浄土でも宝石は装飾品として使われる存在」というところから発想を経てできてきた宝石の国という作品。では宝石を救うには?人間を救うには?という壮大な思考実験を長きにわたり完遂させた先生には本当に感服します。
全13巻、108話完結というのも意図的でしょうし、最終巻13巻は秋に発売予定なので今から楽しみです。
ご興味のある人はコミックデイズで電子版も読めますので是非読んでみて下さい。
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